平均課税とは、その年に大きく増えた所得の一部を、通常より低い税率で計算できる所得税の特例です。漫画家・作家・イラストレーター・作曲家など、作品のヒットや連載・出版のタイミングで収入が年によって大きく変動するクリエイターの方に、特に関係の深い制度です。当事務所にも、こうしたクリエイターの方の確定申告についてご相談をいただくことがあります。この記事では、平均課税の対象と要件、そして意外と知られていない「使い忘れても更正の請求で取り戻せる」という重要なポイントを整理します。

なぜクリエイターに平均課税が効くのですか?

日本の所得税は累進課税で、所得が大きいほど高い税率がかかります。そのため、数年かけて描いた作品が一気にヒットした年など、特定の年に収入が集中すると、その年だけ極端に高い税率がかかってしまいます。

平均課税は、この「山」をならすための制度です。大きく増えた所得(平均課税対象金額)のうち5分の4を、低い平均税率で課税することで、累進の急な立ち上がりをやわらげ、結果として所得税を抑えられます。

所得が大きく増えた年の所得税(イメージ) 高い税率がかかる 所得税 通常の課税 税率がならされる 所得税 平均課税を適用 軽減 ※累進課税の緩和イメージです。実際の金額は所得・控除により異なります。

収入が毎年ほぼ一定の方には関係がありませんが、年によって大きく上下するクリエイターの方ほど、恩恵が大きくなります。

対象になる「変動所得」とは?(漫画家・作家が該当します)

変動所得とは、年によって金額の変動が大きい特定の所得のことで、所得税法でその範囲が決められています。クリエイターに関係するのは、次のものです。

  • 原稿・作曲の報酬に係る所得 … 漫画家・作家の原稿料、作曲家の作曲報酬など
  • 著作権の使用料に係る所得 … 印税、楽曲・作品の使用料など

つまり、漫画家の原稿料・印税、作家の印税、作曲家の楽曲使用料は、変動所得として平均課税の対象になり得ます。平均課税の対象所得を整理すると次のとおりです。

区分主な例(クリエイター関連を中心に)
変動所得原稿・作曲の報酬(漫画家・作家の原稿料、作曲家の作曲報酬など)、著作権の使用料(印税、楽曲・作品の使用料など)。ほかに漁獲・のりの採取、はまち・まだい・真珠等の養殖から生じる所得
臨時所得3年以上の期間にわたる不動産等の権利設定の一時金、プロスポーツ選手の契約金 など

※ご注意:同じ制作活動でも、その収入が「原稿・作曲の報酬」や「著作権の使用料」に当たるかどうかで判定が変わります。たとえばYouTuber・VTuberの広告収入や、単発の制作物の対価は、一般に事業所得・雑所得であって変動所得には当たらないことが多く、平均課税の対象にならない場合があります。ご自身の収入がどれに当たるかは、契約内容や実態にもとづく判断が必要です。

平均課税を使える条件(20%要件)

平均課税を選べるのは、その年の「変動所得+臨時所得」の合計額が、総所得金額の20%以上である場合です。

さらに変動所得については、前年・前々年の変動所得と比べて増えた部分が対象になる、という調整があります(前2年の変動所得の平均を超える部分が「平均課税対象金額」に反映されます)。そのため、毎年コンスタントに変動所得がある方より、久しぶりに大きく跳ねた年のほうが、効果が出やすい仕組みです。

税額はどう計算されるのですか?

おおまかには、次の手順で計算します(ポイントは、大きく増えた所得の5分の4を、低い平均税率で課税するという点です)。

  1. 「平均課税対象金額」を求める(変動所得の増えた部分+臨時所得)。
  2. 課税総所得金額から、平均課税対象金額の5分の4を差し引いた「調整所得金額」に対する税額を計算する。
  3. その税額から平均税率を求め、残りの5分の4部分にその平均税率を掛ける。
  4. 両者を合計したものが、その年の所得税額になります。

実際の軽減額は、所得の大きさや控除の状況によって変わります。「自分の場合はいくら変わるのか」は、当事務所で試算いたします。

【重要】使い忘れても大丈夫 — 更正の請求で過去5年分さかのぼれます

ここが最も見落とされやすく、そして大切なポイントです。平均課税は、当初の確定申告で使い忘れても、あとから「更正の請求」で適用できます。

所得税法は、平均課税の適用を受ける旨を記載できる書類として、確定申告書・修正申告書に加えて「更正請求書」を明記しています。そして更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内であれば行えます。

使い忘れても「更正の請求」で取り戻せる期間 5年前 4年前 3年前 2年前 前年 本年(今) ↑ 更正の請求で取り戻せる範囲(法定申告期限から5年以内) ※「あの年は税金が高かった」と感じる過去の年があれば、見直しで還付になることもあります。

つまり、過去にヒットした年に平均課税を使っていなかった漫画家・作家の方でも、5年以内であれば申告をやり直して税金を取り戻せる可能性があるということです。当事務所での実務や周りで聞く話でも、「過去の申告を見直したら還付になった」というケースは珍しくありません。

「あの年、税金が高すぎた気がする」という心当たりがある方は、一度、過去の確定申告書をご確認ください。

クリエイターの確定申告は、当事務所にご相談ください

変動所得の判定や平均課税の計算、過去分の更正の請求は、ご自身では気づきにくく、手続きも細かい分野です。当事務所(堺市北区新金岡)では、漫画家・作家・イラストレーター・作曲家など、クリエイターの方の確定申告や、過去分の見直しをサポートしています。

余談ですが、最近はコミックマーケット(コミケ)に足を運んでいたりします。日程や時間が合えば、そうしたタイミングでご相談のお時間をつくれることもあるかもしれません。クリエイター活動をされている方こそ、どうぞお気軽にお声がけください。

確定申告・税務申告のサービス、料金の目安は報酬一覧をご覧ください。「自分の収入が変動所得に当たるか」「過去分を取り戻せるか」を知りたい方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

※本記事は令和8年(2026年)7月時点の法令等にもとづく一般的な解説です。変動所得への該当や平均課税の適用可否は、個々の契約内容・所得状況により異なります。具体的な判断は当事務所までご相談ください。

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