海外との取引をされている事業者さまの間で、Wise(ワイズ)やPayPal(ペイパル)を使った代金のやり取りが当たり前になってきました。当事務所の顧問先でも、輸出や海外向けサービスの売上をWiseで受け取っている方が増えています。便利なサービスですが、経理の面でひとつ注意していただきたいことがあります。それは、銀行の通帳に入金された金額だけで記帳を済ませてはいけないということです。この記事では、その理由と、Wise・PayPalそれぞれの取引明細のダウンロード手順、マネーフォワード クラウド会計への取り込み方法までを解説します。

Wiseとはどんなサービスですか?

Wiseは、海外送金や外貨の受け取りが低コストでできる、イギリス発の送金サービスです。日本では資金決済法に基づく「資金移動業者」として登録されたWise Payments Japan株式会社がサービスを提供しています。銀行のように使えますが、銀行ではありません(預金保険の対象外です)。

Wiseのアカウントには通貨ごとの「口座(お財布)」があり、たとえば米ドルで売上を受け取り、アカウント内で円に両替して、日本の銀行口座に引き出す、という使い方をします。この「Wiseの中での動き」が、通帳には一切記録されない——ここが経理上のポイントになります。PayPalも仕組みは同じです。

なぜ通帳の入金だけで記帳してはいけないのですか?

通帳に印字されるのは、Wise・PayPalから銀行口座に引き出した後の金額だけです。その手前で起きている「売上の受け取り」「手数料の差し引き」「両替」は、通帳のどこにも出てきません。

海外の取引先 外貨で代金を支払う Wise / PayPal ① 売上の受け取り(外貨) ② 手数料の差し引き ③ 円への両替(為替レート) 銀行口座 円で引き出し 通帳に記録されるのは この部分だけ ①〜③は通帳に出てこない → 取引明細でしか確認できない

簡単な数字の例で見てみます(説明用に丸めた数字です)。

Wiseの中で起きていること金額
売上の受け取り(1,000ドル・円換算)150,000円
Wiseの手数料▲1,500円
円に両替して銀行口座へ引き出し148,500円 ← 通帳にはこれだけが印字される

通帳だけを見て「売上 148,500円」と記帳すると、次の問題が起こります。

  • 売上が少なく計上される … 売上は手数料を差し引く前の総額(この例では150,000円)で計上するのが原則です。手数料差引後の純額で記帳すると、売上高が実際より小さくなります。売上高は消費税の納税義務の判定(課税売上高1,000万円)や簡易課税の判定にも使われる数字ですから、ここが崩れると影響は帳簿の中だけにとどまりません。
  • 手数料の経費が漏れる … Wise・PayPalの手数料は支払手数料として経費になります。通帳だけではその存在すら分かりません。
  • アカウント残高が帳簿に載らない … 引き出さずにWise・PayPalに残っているお金は、事業の資産です。決算日時点の残高は帳簿に計上する必要があり、外貨のまま持っている残高は決算日のレートで円換算します。
  • 為替差損益が把握できない … 売上を受け取った日と両替・引き出しの日ではレートが動きます。その差額(為替差損益)は、取引明細がなければ計算のしようがありません。

また、輸出売上について消費税の還付申告を行う場合、税務署からの行政指導では売上の請求書と入金記録のひも付けを求められます。このときの「入金記録」の役割を果たすのが、まさにWise・PayPalの取引明細です。通帳だけでは、どの入金がどの売上に対応するのか説明できません。

取引明細は、青色申告の帳簿書類(取引に関して作成・受領した書類)としても保存が必要なものです。「通帳があるから大丈夫」ではなく、銀行の通帳と同じ感覚で、Wise・PayPalの明細も毎期きちんと保存するとお考えください。

Wiseの取引明細のダウンロード方法

Wiseの取引明細は、Web・アプリのどちらからでもダウンロードできます(PDF・CSV・Excel形式。Web版ではこのほか会計ソフト向けの形式も選べます)。

  1. Wiseにログインし、画面上部の自分のイニシャル(プロフィール)をクリックします。
  2. 「明細書および報告書(取引明細とレポート)」を選択します。
  3. 「取引明細」を選び、明細が必要な通貨(お財布)期間を指定します。
  4. ファイル形式でCSVを選んでダウンロードします。

ポイントは次の3つです。

  • 明細は通貨(お財布)ごとに作成されます。米ドルと円を使っている場合は、両方の明細をダウンロードしてください(Web版では複数の通貨をまとめて選択できます)。
  • 1回でダウンロードできるのは最長365日分です。事業年度(個人の方は1月1日〜12月31日)で期間を指定すれば、1年分が1ファイルに収まります。
  • 各通貨の残高画面の「…」メニューから直接「明細書および報告書」を開くこともできます。

PayPalの取引明細のダウンロード方法

ビジネスアカウントの場合、過去7年分の取引履歴をダウンロードできます。

  1. PayPalにログインし、メニューの「レポート」を開きます。
  2. 「取引履歴のダウンロード(活動状況のダウンロード)」を選択します。
  3. 取引タイプは「すべての取引」、期間は対象の事業年度を指定します(1回のリクエストで最長12か月分)。
  4. ファイル形式でCSVを選び、「レポートを作成」をクリックします。作成が終わると同じ画面からダウンロードできます。

パーソナルアカウントをお使いの場合も、設定メニューの「データとプライバシー」などから明細書(ステートメント)を取得できます。事業でPayPalをお使いなら、レポート機能が充実しているビジネスアカウントへの切り替えをおすすめします。

マネーフォワード クラウド会計なら取り込みは簡単です

ダウンロードした明細を1件ずつ手で入力する必要はありません。当事務所が標準でお願いしているマネーフォワード クラウド会計なら、次の方法で取り込めます。

サービス取り込み方法
PayPalAPI連携(自動取得)に対応。「データ連携」からPayPalを登録すれば、明細が自動で取り込まれます。外貨取引は取引日の為替レート(三菱UFJ銀行の仲値)で円換算されます
Wise自動連携には未対応のため、ダウンロードしたCSVをインポートします。「連携サービスから入力」のインポート機能(通帳・カード等)からCSVを取り込めば、あとは通常の明細と同じように仕訳登録できます

一度仕訳の登録ルールを作ってしまえば、2回目以降はほとんど自動で処理が進みます。CSVのままお送りいただければ、取り込みは当事務所で行うことも可能ですので、「やり方がよく分からない」という方は明細のダウンロードだけしていただければ大丈夫です。

なお、PayPalをAPI連携で自動取込されている場合でも、決算時にはCSVの取引明細を別途お送りください。自動取込は日々の記帳を楽にする仕組みであり、明細そのものの保存に代わるものではありません。連携の取得漏れがないかの照合や、還付申告の行政指導で求められる入金記録の提示には、PayPalが発行する明細データが必要になります。

顧問先の皆さまへのお願い

決算・確定申告の資料をご準備いただく際は、通帳とあわせて次の2点をお願いします。

  • Wise … お使いの全通貨の取引明細CSV(対象の事業年度分)
  • PayPal … 「すべての取引」の取引履歴CSV(対象の事業年度分)。マネーフォワードで自動連携済みの方も、CSVは別途お願いします

紙に印刷していただく必要はありません。CSVファイルのままメール・チャットでお送りいただくのが、いちばん正確で速い方法です。日々の処理から当事務所にお任せいただいている場合も、明細のダウンロードはアカウントをお持ちのご本人にしかできませんので、ご協力をお願いいたします。

海外取引の経理・税務は、当事務所にご相談ください

当事務所(堺市北区新金岡)では、輸出入や海外向けサービスの事業者さまの顧問として、Wise・PayPalを含む日々の記帳から、消費税の還付申告・行政指導への対応までを一貫してサポートしています。マネーフォワード クラウド公認のプラチナメンバーとして、クラウド会計の導入・運用のご支援も得意としています。記帳代行確定申告・税務申告のサービス、料金は報酬一覧をご覧ください。海外取引の経理でお悩みの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

※本記事は令和8年(2026年)7月時点の情報と、当事務所の実務経験にもとづく一般的な解説です。Wise・PayPal・マネーフォワード クラウド会計の画面や機能は変更されることがあります。個々の取引の取扱いは状況により異なる場合がありますので、具体的な判断は当事務所までご相談ください。

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