2割特例とは、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)になった小規模事業者が、納める消費税を「売上にかかる消費税の2割」で済ませられる負担軽減措置です。令和5年10月のインボイス制度開始とあわせて設けられたこの特例が、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)で終了します。当事務所(堺市北区新金岡)にも「次の期はどう計算すればよいのか」「いまから免税事業者に戻れるのか」というご相談が増えてきました。この記事では、個人事業者と法人で「最後の期」が違うこと、終了後の選択肢、法人だけが直面する「崖」、そして同じ10月1日から始まる仕入側の控除縮小と会計ソフトの対応を、実務で判断する順番に整理します。

先に結論です。

  • 個人事業者:令和8年分(令和9年3月申告)まではこれまでどおり2割特例。令和9年分・令和10年分は「3割特例」と簡易課税を比較。免税事業者に戻るなら令和8年12月17日までに届出。
  • 法人:決算月から「2割特例が使える最後の期」を確認し、翌期の納税額を簡易課税・本則課税の両方で試算。2割特例で申告した期の翌期なら、簡易課税の届出は翌期の申告期限まででも間に合いますが、法人に3割特例はありません。
  • 本則課税で申告する方(個人・法人とも):10月1日から免税事業者からの仕入れの控除が80%から70%に。会計ソフトが「70%」に対応しているか(弥生会計は27が必要)を10月1日より前に確認。

2割特例はいつまで使えますか — 個人と法人で「最後の期」が違います

2割特例が使えるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。課税期間とは消費税を計算する区切りの期間で、個人事業者は暦年(1月〜12月)、法人は事業年度です。「9月30日で打ち切り」ではなく「9月30日を含む課税期間の終わりまで」なので、最後の期は事業形態と決算月によって変わります。

  • 個人事業者:課税期間は暦年(1月〜12月)なので、令和8年分(2026年1月〜12月)が最後です。令和9年3月31日が期限の消費税の確定申告(所得税の3月15日とは期限が異なります)が、2割特例を使える最後の申告になります。令和9年分・令和10年分は、個人事業者だけが使える「3割特例」(納める消費税が売上税額の3割になる、2割特例の後継の措置。詳しくは後述)に移ります。
  • 法人令和8年9月30日を含む事業年度が最後です。3月決算なら令和9年3月期(令和8年4月〜令和9年3月)まで使えますが、9月決算なら令和8年9月期で終わり、令和8年10月1日から始まる令和9年9月期は、もう2割特例が使えません
「2割特例が使える最後の期」は、決算月で変わります 令和7年10月 令和9年1月 令和9年12月 令和8年9月30日 個人事業者 2割特例 令和8年分(最後) 令和9年分 → 3割特例 3月決算法人 令和9年3月期(最後) 令和10年3月期 → 特例なし 9月決算法人 令和8年9月期(最後) 令和9年9月期 → 特例なし 12月決算法人 令和8年12月期(最後) 令和9年12月期 → 特例なし 2割特例が使える最後の期 3割特例(個人事業者のみ) 特例なし(簡易課税か本則課税)
事業形態・決算月2割特例が使える最後の課税期間2割特例なしで迎える最初の課税期間
個人事業者(暦年)令和8年分(令和8年1月〜12月)令和9年分(令和9年1月〜)※3割特例あり
3月決算法人令和9年3月期(令和8年4月〜令和9年3月)令和10年3月期(令和9年4月〜)
6月決算法人令和9年6月期(令和8年7月〜令和9年6月)令和10年6月期(令和9年7月〜)
9月決算法人令和8年9月期(令和7年10月〜令和8年9月)令和9年9月期(令和8年10月〜)
12月決算法人令和8年12月期(令和8年1月〜12月)令和9年12月期(令和9年1月〜)

2割特例は事前の届出がいらず、申告書に「2割特例の適用を受ける」旨を付記するだけで使えます。最後の期についても同じですので、令和8年分(法人は該当する事業年度)の申告では、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であることなど、「インボイス登録がなければ免税事業者だった期」であることを確認したうえで、忘れずに付記してください。

終了後の選択肢は3つ — 簡易課税・本則課税・免税事業者に戻る

2割特例が終わった後の消費税の計算方法は、次の3つのいずれかになります(個人事業者は、令和9年分・令和10年分に限り、これに加えて次の章で説明する「3割特例」も選べます)。簡易課税の届出を出していない方は、何もしなければ自動的に本則課税になります。一方、インボイス登録のときに「消費税簡易課税制度選択届出書」もあわせて提出している方は、届出の効力が残っているため、2割特例が終わると自動的に簡易課税になります(基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合。2割特例は簡易課税を選んでいても使えたため、この方は少なくありません)。まず「自分は簡易課税の届出を出しているか」を確認したうえで、次の3つを比べてください。

簡易課税の届出を出している方が本則課税で申告したい場合は、本則課税にしたい課税期間の初日の前日まで(個人の令和9年分なら令和8年12月31日、3月決算法人の令和10年3月期なら令和9年3月31日)に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。この届出は期が始まってからでは出せません。なお、簡易課税には届出の効力が生じた期から2年間はやめられないルールがありますが、インボイス登録時(令和5年)に届出を出した方はすでにこの期間を過ぎています。

比較項目簡易課税本則課税
(一般課税・原則課税)
免税事業者に戻る
計算のしかた売上税額に業種別の「みなし仕入率」を掛けた額を、仕入れの消費税とみなして差し引く実際に支払った消費税を実額で控除消費税の申告・納税なし
主な要件基準期間の課税売上高5,000万円以下。原則2年間は継続要件なし(簡易課税の届出を出していなければ自動的にこちら)基準期間の課税売上高1,000万円以下。インボイス登録を取り消す
必要な届出消費税簡易課税制度選択届出書(後述の期限の特例あり)なし(簡易課税の届出を出している方は、期首の前日までに簡易課税制度選択不適用届出書)登録取消届出書を、翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで
受け取ったインボイス消費税の計算上は保存不要(所得税・法人税の帳簿書類として請求書・領収書の保存は必要)保存が必要(免税事業者からの仕入れは経過措置で一部のみ控除)—(自分もインボイスを発行できなくなる)
向きやすい方経費の少ないサービス業・士業・コンサルタントなど仕入・外注・設備投資が多い、輸出など還付が見込める売上先が消費者や免税事業者中心で、インボイスを求められない

簡易課税は、実際の経費の額にかかわらず「売上税額の何%を仕入れの消費税とみなして差し引くか」を業種ごとに決めた「みなし仕入率」(第1種・卸売業90%、第2種・小売業等80%、第3種・製造業等70%、第4種・その他60%、第5種・サービス業等50%、第6種・不動産業40%)で計算する方法です。2割特例は業種を問わず一律80%を差し引いていましたので、みなし仕入率が80%未満の業種(製造業・飲食業・サービス業・士業など、多くの小規模事業者が該当します)では、簡易課税に移ると負担が増えます。それでも実額計算が不要で、消費税の計算のためにインボイスを保存しなくてよいという事務負担の軽さは大きく、経費の少ない業種では引き続き有力な選択肢です。なお、税理士が顧問についている場合は、事務負担の軽さではなく、納税者にとって簡易課税と本則課税のどちらが税額の面で有利かを試算して選ぶのが一般的です。

本則課税(一般課税・原則課税)は、受け取ったインボイスをもとに、実際に支払った消費税を差し引く方法です。仕入・外注・設備投資が多い事業や、輸出などで還付が見込める事業では有利になりますが、受領インボイスの保存と帳簿の記載が控除の条件になるため、経理の手間は確実に増えます。

免税事業者に戻るには、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。提出期限は、免税に戻りたい課税期間の初日から起算して15日前の日までです。

  • 個人事業者が令和9年1月1日から戻る → 令和8年12月17日まで(1月1日から起算して15日前の日。国税庁の事例集でも「個人・12月決算法人が1月1日から登録を取り消す場合の提出期限は12月17日」と示されています)
  • 3月決算法人が令和10年3月期(令和9年4月1日開始)から戻る → 令和9年3月17日まで
  • 9月決算法人が令和9年9月期(令和8年10月1日開始)から戻る → 期限(令和8年9月16日)はすでに過ぎています。令和9年9月期は簡易課税か本則課税で申告し、戻れるのは早くても令和10年9月期からです

この期限は、土日祝日に当たっても翌日には延びません(郵送の場合は、期限内の通信日付=消印があれば有効です)。また、過去に「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になっている方は、戻りたい課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出も必要です。あわせて次の3点をご確認ください。

期限を過ぎてしまった場合の最終手段として、課税期間を3か月(または1か月)ごとに短縮する「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を使う方法があります。課税期間を短縮すると「翌課税期間の初日」が数か月先に来るため、その初日から起算して15日前の日までに登録取消届出書を提出すれば、1年待たずに免税事業者に戻れます。たとえば個人事業者が令和8年12月17日の期限を逃した場合でも、令和9年3月17日までに、課税期間特例選択・変更届出書(4月1日開始・3か月ごと)と登録取消届出書の両方を提出すれば、令和9年4月1日から免税事業者に戻れ、課税事業者でいる期間を令和9年1月〜3月の3か月に抑えられます。この場合、令和9年1月1日〜3月31日が一つの課税期間とみなされ、その分の消費税申告が必要です(申告期限は課税期間終了の翌日から2か月以内=令和9年5月31日。個人事業者の「翌年3月31日」の期限は、12月31日を含む課税期間だけの扱いです)。また、この1〜3月分を含め、課税期間を短縮している期間には2割特例・3割特例が使えないため、本則課税か簡易課税で申告することになります。法人も同じ考え方が使えます(区切りは事業年度の初日から3か月ごと)。そのほか、短縮した課税期間は2年間やめられず(その間に課税事業者になる期があれば申告は3か月ごと)、登録の経過措置による「2年縛り」や基準期間の課税売上高1,000万円以下の要件もそのまま残ります。実行する前に必ずご相談ください。

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることが必要です(個人の令和9年分なら、令和7年分の課税売上高で判定します。前年の上半期の売上などで判定する「特定期間」のルールもあるため、前年上半期の課税売上高が1,000万円を超えた方はご相談ください)。
  • 「2年縛り」があります。免税事業者が登録の経過措置(課税事業者選択届出書を出さずに、登録日から課税事業者になる仕組み)で登録を受けた場合、登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは免税事業者に戻れません。制度開始時の令和5年10月1日を含む課税期間(個人なら令和5年分、3月決算法人なら令和6年3月期)に登録した方にはこの制限はありませんが、それより後の課税期間に登録した方(個人なら令和6年以降に登録した方)は、登録日から2年を経過する日がどの課税期間に入るかをご確認ください(課税事業者選択届出書を出して登録した方にも、課税事業者を選んだ期から2年間、設備投資をした場合は3年間、免税に戻れない別の制限があります)。
  • 売上先への影響を確認してください。登録を取り消すとインボイスを発行できなくなり、本則課税の売上先は、あなたへの支払いにかかる消費税を全額は控除できなくなります(後述の経過措置で一部のみ控除)。売上先が消費者や、免税事業者・簡易課税の事業者中心であれば影響は限定的です。

【法人の方は特にご注意】3割特例は個人事業者だけ — 法人は「崖」になります

令和8年度税制改正で、個人事業者には令和9年分・令和10年分の2年間、納付税額を売上税額の3割とする「3割特例」が新設されました。2割特例と同じく届出は不要で、申告書への付記で選べます(詳しい要件と簡易課税との比較は、姉妹記事「インボイス制度の実務 — 2割特例の期限と3割特例」をご覧ください)。個人事業者は、2割→3割→本則課税か簡易課税、と段階を踏んで負担が上がっていく設計です。

一方、法人には3割特例がありません。2割特例が終わった翌事業年度から、いきなり簡易課税か本則課税(要件を満たせば免税)になります。

個人事業者にはワンクッション、法人には「崖」 個人事業者 2割特例(8割控除)〜令和8年分 3割特例(7割控除)令和9年分・令和10年分 本則課税 か 簡易課税令和11年分〜 法人 2割特例(8割控除)令和8年9月30日を含む期 本則課税 か 簡易課税(要件を満たせば免税)翌事業年度からすぐ 3割特例なし=負担が一段で増える ※「8割控除」「7割控除」は売上税額から差し引ける割合。簡易課税はみなし仕入率、本則課税は実額で控除します。 ※いずれの特例も、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間には使えません。

金額で見ると差がはっきりします。標準税率10%のみの課税売上高1,000万円(税抜。消費税100万円)のサービス業(第5種)を例にすると、次のとおりです。

計算方法納める消費税(年額)使える方・時期
2割特例20万円個人:令和8年分まで/法人:令和8年9月30日を含む期まで
3割特例30万円個人事業者のみ:令和9年分・令和10年分
簡易課税(第5種・みなし仕入率50%)50万円要届出。基準期間の課税売上高5,000万円以下
本則課税(課税仕入れ300万円・消費税30万円の場合)70万円届出不要。実額により変動

※経費の少ないサービス業の例です。仕入・外注・設備投資が多く、支払った消費税が売上税額の半分を超えるような事業では、本則課税のほうが簡易課税より少なくなります。

2割特例の20万円に慣れていた法人が、翌期から50万円や70万円の納税に変わる。これが法人の「崖」です。納税は決算から2か月後にまとめて発生するため、資金繰りへの影響は小さくありません。年間の消費税の納税額がおよそ62万円(法令上は、地方消費税を除く国税分で48万円)を超えると、その翌期からは中間申告(年の途中での前払い)も始まります。いまのうちに「翌期の納税額はいくらになるか」を試算し、簡易課税と本則課税のどちらが有利かを把握しておくことをおすすめします。

2割特例を使っていた方が簡易課税に切り替えるなら — 届出は「期が終わってから」でも間に合います

通常、簡易課税は適用したい課税期間が始まる前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておく必要があります。ところが、2割特例を使った方には特例があります。

2割特例(個人の場合は3割特例も)を使った期の翌期については、その翌期の申告期限までに届出書を提出すれば、その期から簡易課税を適用できます。令和8年度税制改正で期限が「翌期の末日まで(翌課税期間中)」から「翌期の申告期限まで」に延ばされたもので、個人・法人とも対象です。つまり、期が終わって実際の売上・経費の数字を見てから、簡易課税と本則課税のどちらにするかを決められるということです。

  • 9月決算法人:令和8年9月期が2割特例の最後。翌期の令和9年9月期(令和8年10月〜令和9年9月)について、令和9年11月30日の申告期限までに届出すれば、令和9年9月期から簡易課税で申告できます。
  • 3月決算法人:令和9年3月期が最後。翌期の令和10年3月期について、令和10年5月末の申告期限まで(申告期限の延長特例を受けている法人は延長後の期限)に届出すれば間に合います。
  • 個人事業者:令和8年分が2割特例の最後。令和9年分について3割特例ではなく簡易課税を選びたい場合は、令和9年分の申告期限(令和10年3月31日)までの届出で間に合います。3割特例を使った後の令和11年分についても同じ考え方です。

注意点は2つです。第一に、この特例が使えるのは2割特例(個人は3割特例も含む)を実際に適用して申告した期の「翌期」だけです。最後の期を本則課税(原則課税)や簡易課税で計算した場合、その翌期にはこの特例は使えず、通常どおり期首前の届出が必要です。特例で簡易課税に移った後は、「簡易課税制度選択不適用届出書」を出すまで簡易課税が続きます(翌期以降に新たな届出は不要です)。第二に、簡易課税は一度選ぶと原則2年間は継続しなければならず、翌年に大きな設備投資や還付が見込まれる場合は不利になり得ることです。

もう一つの負担増 — 免税事業者からの仕入れの控除が10月1日から70%に下がります

同じ令和8年10月1日から、本則課税で申告する事業者にとって別の負担増が始まります。インボイス登録をしていない免税事業者などからの仕入れについては、インボイスがなくても仕入税額相当額の80%を控除できる「経過措置」(制度の切り替えにともなう、期間限定の緩和ルール)があります(令和8年9月30日まで)。この割合は10月1日から70%、令和10年10月から50%、令和12年10月から30%と段階的に縮小し、令和13年10月以後は控除できなくなります。改正前は令和8年10月から3年間50%、その後は控除なしとなる予定でしたが、令和8年度税制改正で適用期限が2年延長されたうえで、この段階的な形に見直されました(改正前の予定と比べると当面の割合は緩和されていますが、現在の80%からは下がります)。

免税事業者に税込110万円(消費税分10万円)を支払ったとき、控除できる金額 10月1日からここ 8万円80% 7万円70% 5万円50% 3万円30% 控除できません 〜令和8年9月 令和8年10月〜令和10年9月 令和10年10月〜令和12年9月 令和12年10月〜令和13年9月 令和13年10月〜 ※本則課税で申告する事業者だけに関係します(簡易課税・2割/3割特例の方は影響しません)。 ※控除には、帳簿への「経過措置の適用を受ける旨」の記載と、税率ごとの金額が書かれた請求書等の保存が必要です。

この経過措置が関係するのは、本則課税で申告する事業者だけです。簡易課税や2割・3割特例はみなし計算のため、仕入先が登録事業者かどうかは納税額に影響しません。逆に言えば、2割特例が終わって本則課税に移る法人は、はじめて実額で仕入税額を計算することになり、そのとき免税事業者からの仕入れは70%しか控除できないという前提で試算する必要があります。

実務では次の点にご注意ください。

  • 控除割合は仕入れを行った日で判定します。9月30日の仕入れは80%、10月1日の仕入れは70%です。決算期の途中で割合が切り替わる法人は、区分して集計する必要があります。
  • 控除を受けるには、帳簿に「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載し(例:「70%控除対象」)、税率ごとに区分した金額などが書かれた請求書等(インボイス制度前の様式で、「区分記載請求書等」といいます)を保存する必要があります。

会計ソフトは「70%」に対応していますか — マネーフォワードと弥生会計で対応時期が違います

10月1日以降の取引を入力するとき、会計ソフト側に「70%控除」の区分がなければ正しく計算できません。当事務所で主にお使いいただいている2つのソフトの状況は、次のとおりです(2026年9月時点・各社の公表情報にもとづく)。

確認項目マネーフォワード クラウド会計・確定申告弥生会計(デスクトップ版)
70%控除への対応2026年7月9日のアップデートで仕訳入力が対応済み(消費税申告書の作成機能は対応完了後に案内予定と告知)対応プログラムは「弥生会計 27」で提供(弥生26以前には対応プログラムなし)
入力のしかた仕訳登録時にプルダウンで「適格/80%/70%/50%/30%/控除なし」を選択。取引先の登録内容から自動補完する設定も可27にアップデートしたうえで入力(具体的な操作は弥生のサポート情報をご確認ください)
入手・切替の時期クラウドのため自動で反映2026年10月1日時点で「あんしん保守サポート」等が有効な方:9月10日(プロフェッショナル)/9月15日(スタンダード)からオンラインアップデート。店頭・オンラインストアでの発売は10月16日

表を踏まえて、10月1日までに確認しておきたいのは次の点です。

  • マネーフォワードをお使いの方:仕訳入力はそのままで問題ありません。「事業者」画面の「インボイス経過措置の利用制限」を有効にしておくと、取引日の時点で施行されていない割合を選んだ仕訳を登録できなくなり、誤入力を防げます。消費税申告書の作成機能は対応完了後に案内予定とされているため、70%の区分を含む最初の申告(10月以降に決算を迎える本則課税の法人)の前に、対応状況をご確認ください。
  • 弥生会計をお使いの方10月1日より前に、バージョンが27になっているかをご確認ください。弥生26以前のまま10月1日以降の仕入れを入力してしまうと、あとから区分を直す手間が発生します。あんしん保守サポートが切れている場合は、10月16日から店頭・オンラインストアで発売される27を購入するか(2026年8月1日以降に弥生26を新規購入してユーザー登録した方には、27がオンラインアップデートで無償提供されます)、この機会にクラウド会計への移行を検討するのも一つの方法です。
  • 個人事業者で弥生会計をお使いの方:令和9年分から始まる3割特例への弥生会計の対応時期は、9月時点では未定と案内されています。令和9年分の申告前に改めてご確認ください。

当事務所はマネーフォワード クラウドのPLATINUMパートナー、弥生会計のGOLD会員です。バージョンの確認やアップデート、経過措置の区分設定、他社ソフトからの載せ替えは会計ソフト導入・サポートで承っています。

いま何をすべきですか — 個人・法人別のチェックリスト

個人事業者の方

  • 令和8年分(令和9年3月申告)は、これまでどおり2割特例で申告できます。申告書への付記をお忘れなく。
  • 令和9年分・令和10年分は3割特例(7割控除)と簡易課税を比較してください。卸売業(みなし仕入率90%)・小売業(80%)は簡易課税が有利になりやすく、届出は令和9年分の申告期限(令和10年3月31日)までで間に合います。
  • 免税事業者に戻るなら、令和8年12月17日までに登録取消届出書を提出。基準期間の売上と「2年縛り」、売上先への影響を先に確認してください。
  • 本則課税で申告している方は、10月1日以降の免税事業者からの仕入れを「70%」で区分できるよう、会計ソフトの対応を確認してください。

法人の方

  • 決算月から自社の「2割特例が使える最後の期」を確認してください。9月決算法人は、10月1日から2割特例のない期が始まります。
  • 翌期の納税額を簡易課税・本則課税の両方で試算し、資金繰りに織り込んでください。
  • 簡易課税を選ぶなら、翌期の申告期限までに届出(2割特例で申告した期の翌期に限る特例。本則課税や簡易課税で計算した期の翌期には使えません)。ただし2年間の継続が原則です。
  • 本則課税を選ぶなら、受け取ったインボイスの保存体制、免税事業者からの仕入れの区分(70%)、会計ソフトのバージョンを、2割特例のない期が始まる日(9月決算法人は10月1日、3月決算法人は令和9年4月1日)までに整えてください。
  • 免税事業者に戻る場合は、戻りたい期の初日から起算して15日前の日までに届出(3月決算法人が令和10年3月期から戻るなら令和9年3月17日)。「2年縛り」と売上先への影響もご確認ください。

2割特例終了後の消費税は、当事務所にご相談ください

当事務所(堺市北区新金岡)では、堺市周辺の個人事業主・フリーランス・小規模法人の皆様の、消費税の計算方法の選択と届出、決算・申告をサポートしています。「自分の会社の最後の期はいつか」「簡易課税と本則課税でいくら違うか」という具体的な試算から、無料相談で承ります。オンラインでのご相談にも対応していますので、堺市外の方もお気軽にどうぞ。

継続的なサポートは顧問契約、申告のみのご依頼は確定申告・税務申告法人の決算・申告(年1回の関与)、会計ソフトのアップデートや載せ替えは会計ソフト導入・サポートをご覧ください。料金の目安は報酬一覧に掲載しています。

※本記事は令和8年(2026年)9月時点の法令等および各社の公表情報にもとづく一般的な解説です。特例の適用可否や有利不利は、基準期間の課税売上高・業種・取引先の状況などにより異なります。なお、令和9年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率が引き下げられ、飲食料品を販売する事業者には簡易課税の計算方法や届出時期の特例が別に設けられます。本記事ではこの特例は扱っていませんので、該当する方は個別にご相談ください。会計ソフトの対応状況は各社の最新の案内をご確認ください。具体的な判断は当事務所までご相談ください。

出典