当事務所には、創業・起業の方からのご相談が多く寄せられます。私自身も2018年9月に堺市で事務所を開業しました。この記事は、そのときの体験をもとに、これから創業・起業される方の少しでも参考になればと思って書いたものです。

開業の前後には、複合機や電話、ホームページなどについて営業を受けることがあります。高額なリースや長い保守の契約を言葉巧みに勧められ、よく分からないまま契約してしまうと、本当に必要なことに資金を回せなくなります。そうした事態を避けるために、このコラムが少しでも役に立てばと願っています。士業に限らず、小規模で事業を始める方、これから独立される方に向けた内容です。

この記事の流れ

  1. 考え方:事業は「必要最低限の投資」で始める
  2. 設備の実例:複合機・FAX・電話・ホームページに、私はいくらかけたか
  3. 売上の立ち上がり:最初の仕事と、安定するまでの年数
  4. 税金の補足:開業前の支出や備品の買い方は、税金でどう扱うか
  5. まとめ

先に結論です。

  • 複合機は小型から始め、約10万円の機種で十分でした。大型複合機の高額なリースは組んでいません。
  • FAXはインターネットFAXで、使うのは年に数回。固定電話は一般家庭用で十分で、専用のビジネスフォンは入れていません。
  • ホームページは自分で作れる範囲から。業者に頼むなら、独自ドメインの名義と解約の条件を先に確かめます。
  • 事業が安定するまでには3〜4年かかりました。だからこそ、最初の設備にお金をかけすぎないことが大切です。

1. 考え方:事業は「必要最低限の投資」で始めるのがいちばんです

まず、設備を選ぶ前の考え方です。

開業してしばらくは、売上がいつ、どれくらい入ってくるかが読めません。その間も、家賃や生活費などの支払いは続きます。最初に設備へ大きなお金をかけると、その分だけ手元の資金の余裕がなくなります。

設備は、仕事が増えてから買い足しても遅くありません。一方で、リース契約は数年単位で、途中で解約できないものが多くあります。保守の契約も、期間や解約の条件は契約ごとに違います。月々の支払いは小さく見えても、総額では大きな金額になります。勧められたときはその場で決めず、「総額はいくらか」「何年続くか」「途中でやめられるか、やめるときにいくら払うか」を書面で確かめてから判断することをおすすめします。

なお、私は開業にあたって創業融資も受けました。融資の体験はそれだけで1本書ける内容なので、別の記事でご紹介したいと思います。

2. 設備の実例:私が開業時に用意したもの・後から替えたもの・用意しなかったもの

ここからは設備の各論です。私の体験をもとに、開業のときの設備を3つに分けると次のようになります。必要なものは業種や仕事の量によって変わるので、ひとつの例としてご覧ください。

区分設備私の場合(2018年の開業から2026年まで)
開業時に用意したもの小型の複合機小型の機種で開始
開業時に用意したものインターネットFAX税理士会との連絡用。使うのは年に数回
開業時に用意したものホームページテンプレートを購入して自作
後から買い替え・切り替えたものプリンター・複合機A3インクジェット→A4カラーレーザー(いずれも約10万円)
後から買い替え・切り替えたもの電話光回線の事業者向けプランで契約
用意しなかったもの専用のビジネスフォン何十万円もかける必要はないと考えています
用意しなかったもの大型複合機の高額なリース約10万円の機種で十分でした
用意しなかったもの高額なホームページ制作・保守契約自分で作れる範囲から始めました

※金額は私が購入したときのおおよその額です(2026年10月時点でまとめたもの)。機種や時期によって変わります。

複合機は小型で始め、約10万円の機種で十分でした

複合機は、開業時は小型のものを導入しました。その後、大容量のインクタンクを備えたA3対応のインクジェットプリンター(約10万円)に替え、今はA4のカラーレーザー複合機(これも約10万円)を使っています。小規模の事業なら、このくらいで十分だと感じています。

業務用の大型複合機のリースを勧められることもありますが、数年分を合わせると相当な金額になり、途中で解約できない契約も多くあります。印刷の量がとても多い業種でなければ、まずは手頃な機種を買って使い、足りなくなってから考えても遅くはないと思います。

FAXは、どうしても必要な方以外は要らないと考えています

税理士の仕事では、税理士会からの連絡などで、一部どうしてもFAXが必要な場面があります。そのため開業時はインターネットFAXのサービスを導入しましたが、使うのは年に数回ほどです。一般の事業では、FAXが必要になる場面は「今どき?」と言われるほど少なくなりました。取引先とのやり取りがFAX中心の業種でなければ、専用の機械や回線を用意する必要はほとんどないと思います。

固定電話は一般家庭用で、最初は十分です

固定電話は、最初は一般家庭用のもので十分だと考えています。当事務所は今、インターネット回線の事業者向けプランで電話も契約しているので選べる幅は広がりましたが、それでも専用のビジネスフォンに何十万円も払う必要はないと考えています。必要になってから考えても遅くありません。

ホームページは最低限から。ドメインの名義を確かめましょう

開業した当時は今のようなAIもなく、市販のテンプレートを購入して自分で作りました。今ご覧のこのホームページも、私がAIを活用して作っています。必要最低限のホームページなら、以前よりずっと手軽に作れる時代になりました。

一方で、ご相談の中で、高額なホームページの制作と高い保守の契約を結んでいるというお話を伺うことがあります。独自ドメイン(「〇〇.jp」のような自分専用のアドレス)を業者の側が押さえていて、解約やほかへの引っ越しがしにくい形になっている例もあります。AIの広がりで今後は少なくなると思いますが、これから作る方は、契約の前に次の点を確かめておくと安心です。

  • 独自ドメインの名義が誰になっていて、解約したあとも使い続けられるか
  • 保守費用で何をしてもらえるのか、契約期間と解約の条件はどうなっているか
  • 解約するときに、ホームページのデータを渡してもらえるか

必要最低限のホームページであれば私もお手伝いできると考えており、お話を伺う限りニーズもあるようなので、顧問先の方に向けたサービスとして提供できないか検討しています(内容や時期は、まだ決まっていません)。

3. 売上の立ち上がり:最初の仕事は、前の勤務先へのあいさつから始まりました

設備の話から離れて、売上がどう立ち上がったかにも触れておきます。開業してまず前の勤務先へあいさつに伺い、お仕事をいただきました。それでも、事業が安定するまでには3〜4年ほどかかりました。開業してすぐに十分な売上が立つとは限りません。だからこそ、最初の設備に大きなお金をかけず、手元の資金を残しておくことが大切だと、身をもって感じています。

4. 税金の補足:開業前後の支出は税金でどう扱うか

最後に税理士として、設備の買い方を考えるときに知っておきたい税金の扱いを、個人事業を中心に要点だけまとめます(2026年10月時点)。

開業前の準備の費用:事業を始めるまでに、開業の準備のために特別に払った費用は「開業費」となり、経費にする年と金額を選べます(白色申告でも同じです)。黒字になった年まで残しておくこともできます。何にいくら払ったかが分かるよう、領収書や明細を残しておきましょう。会社の場合は「創立費」「開業費」となり、決算で費用として処理した額が経費になります。

パソコンや複合機などの備品:パソコンや複合機など、長く使う物(減価償却資産)を買った支出は開業費ではなく、価格に応じて次のように経費にします。開業前に買ったものは、事業に使い始めた年から経費にします。

1台・1組あたりの価格経費にする方法償却資産の申告
10万円未満使い始めた年に全額を経費にします対象外
10万円以上20万円未満3年で3分の1ずつ経費にする方法(一括償却)を選べます一括償却を選べば対象外
10万円以上40万円未満(青色申告の方)年300万円まで、その年に全額を経費にできます(2029年3月までに取得して事業に使った分。2026年3月までの取得分は30万円未満。開業した年は300万円を月割り)対象

金額は、開業当初の免税事業者なら税込みの価格で判定します(課税事業者で税抜きの経理をしている方は税抜きの価格です)。10万円前後のプリンターは、税込みで10万円未満に収まるかどうかで扱いが変わります。

リースの複合機:途中で解約できないリースの多くは、税務上は「買った」のと同じ扱いで、リース期間にわたって経費にします。毎年の経費は、おおむね払ったリース料と同じくらいになります。「リースなら全額経費になるから得」と言われても、買った場合も上の表のとおり早めに経費にできるので、税金の面で有利とは限りません。リースの総額には金利や手数料も含まれるので、税金よりも契約の中身で比べてください。

償却資産の申告:毎年1月1日に事業用の備品などを持っている方は、1月31日までに市町村へ申告します(固定資産税。最初は開業した翌年の1月)。評価額の合計が150万円未満なら原則として課税されませんが、その場合でも申告を求める市町村があります。リースの複合機は、原則としてリース会社が申告します。

開業届と青色申告の申請:開業届の期限は2026年から「開業した年分の確定申告期限まで」に延びましたが、青色申告承認申請書は今も、1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内です(1月1日〜15日の開業なら、その年の3月15日まで)。過ぎるとその年は白色申告になり、40万円未満の特例も使えません。開業届と一緒に早めに出しておきましょう。令和9年(2027年)分からの青色申告特別控除の改正は、こちらのコラムをご覧ください。

5. まとめ:小さく始めて、必要になったら足していきましょう

事業は、必要最低限の投資で始めるのがいちばんです。複合機は小型のものから、固定電話は一般家庭用で、FAXはどうしても必要な方以外は要らない、というのが私の実感です。リースや保守の契約は総額・期間・解約の条件を確かめてから決め、ホームページはドメインを自分の名義で持てるかも確かめましょう。事業が安定するまでには時間がかかるので、手元の資金を大切にしてください。

当事務所では、これから創業・起業される方のご相談をお受けしています(初回のご相談は1時間程度まで無料です)。開業の資金計画の中で、設備にどこまでお金をかけるかもあわせてご相談いただけます。開業前の準備や手続き、創業融資のサポートについては、創業・起業支援のページをご覧ください。

※本記事は、令和8年(2026年)10月時点の法令等にもとづく一般的な説明です。税金の扱いは、個人事業か会社か、青色申告かどうかなどで異なりますので、具体的には当事務所までご相談ください。

出典