お中元、暑気払いのビアガーデン、そして秋に向けた社員旅行の計画——夏は、取引先や従業員との「お付き合いの支出」が増える季節です。顧問先の皆さまからも、この時期は「これは経費になりますか?」というご質問をよくいただきます。答えの多くは「経費にはなります。ただし科目がどこに入るかで税金の扱いが変わる」です。同じ飲み会でも、福利厚生費なら全額損金、交際費なら損金算入に限度があり、給与と判定されれば従業員に所得税がかかります。この記事では、夏に増える支出の科目の分かれ目を、具体例で整理します。

お中元は経費になりますか?

なります。得意先や仕入先など、事業に関係のある相手への贈答は「交際費」です。お中元・お歳暮・手土産は交際費の典型例で、飲食のように1人あたりいくらという特例はありません。誰に何を贈ったかが分かるように、送り先のリストを請求書・領収書とあわせて保存しておいてください。税務調査では「事業との関係がある相手か」を確認されます。

一方、社名入りのカレンダーやうちわ、タオルなど、少額の物品を不特定多数に配る費用は「広告宣伝費」になり、交際費の限度額の計算から外れます。「特定の相手への贈答=交際費、不特定多数への配布=広告宣伝費」と覚えてください。

なお、従業員個人へのお中元やお祝いの品は性質が別で、金額や状況によっては給与(現物給与)として源泉徴収の対象になることがあります。従業員に何かを渡すなら、後述の福利厚生費の考え方(全員一律・常識的な金額)に沿っているかを確認しましょう。

暑気払い・ビアガーデンは福利厚生費になりますか?

ここが夏いちばんのご質問です。分かれ目は「誰のための飲み会か」です。

  • 従業員全員に参加の機会がある社内行事(全社・部署ごとの暑気払いなど)で、会社負担が常識的な範囲なら「福利厚生費」として全額損金になります。
  • 特定のメンバーだけの飲み会(役員だけ、仲の良い一部の社員だけ)は、福利厚生費にはなりません。社内の者同士の飲食は「交際費(社内交際費)」となり、場合によっては参加者への給与と判定されるリスクもあります。役員だけの飲み会が役員給与とされると、損金にならないうえ役員個人にも所得税がかかる、いちばん不利な結果になりかねません。
  • 一次会は福利厚生費でも、二次会は交際費になりやすい——参加者が絞られ、行事としての一体性がなくなるためです。
  • 取引先を招いての飲食は交際費です。ただし後述の「1人1万円以下」の特例があります。
その飲み会、誰のため? 取引先との飲食(接待) 社外の人が参加している 社内の飲み会 参加者は役員・従業員のみ 1人1万円以下+記録あり → 交際費から除外(全額損金) 1万円超 → 交際費 全員参加・常識的な金額 → 福利厚生費(全額損金) 一部の人だけ → 交際費、場合により 給与と判定されるリスク

取引先との接待飲食については、1人あたり1万円以下(令和6年4月1日以後の支出分。それ以前は5,000円)であれば、年月日・参加者の氏名と関係・人数・金額・店名を帳簿に記録しておくことを条件に、交際費から除外して全額損金にできます。この特例は社外の人との飲食だけが対象で、社内の者同士の飲み会には使えません。領収書に「どこの会社の誰と、何人で」をメモする習慣をつけておくと確実です。

社員旅行はどこまで福利厚生費にできますか?

従業員のレクリエーション旅行は、次の条件をおおむね満たせば、会社負担分を福利厚生費として処理でき、従業員への給与課税もされないのが原則です。

条件内容
旅行の期間4泊5日以内(海外旅行は現地での滞在日数が4泊5日以内)
参加割合全従業員(工場・支店ごとなら、その職場の従業員)の50%以上が参加すること
会社の負担額少額であること。金額の明文基準はありませんが、国税庁の質疑事例などから、実務上は1人あたりおおむね10万円程度までが目安とされています

注意したいのは次のケースです。

  • 不参加者に現金を支給すると、参加者・不参加者の全員に給与課税されます。「行かない人にはその分お金で」は禁物です。
  • 役員だけの旅行、取引先の接待を兼ねた旅行は福利厚生費になりません(役員給与や交際費になります)。
  • 家族の同伴分を会社が負担すると、原則としてその従業員への給与になります。
  • 成績優秀者だけを選抜した旅行も、その人への給与です。

個人事業主の場合はどう考えればよいですか?

個人事業主・フリーランスの方には、後述する法人の「800万円」のような交際費の上限はありません。事業に直接必要な支出かどうかがすべてです。取引先へのお中元や接待は、相手と事業との関係を説明できれば必要経費になります。逆に、家族や友人との食事、事業と関係のない飲み会は、金額がいくら小さくても経費にはなりません。

また、従業員を雇っていない「ひとり事業主」に、福利厚生費は基本的にありません。自分ひとりの慰安旅行や食事を福利厚生費として処理することはできませんので、ご注意ください。誰と・何の目的で会ったかを領収書にメモしておく——地味ですが、これが税務調査でいちばん効きます。詳しくは個人事業主・フリーランスの確定申告ガイドもご覧ください。

法人の交際費は、いくらまで損金になりますか?

交際費は本来、法人税の計算上そのままでは損金になりませんが、特例により、資本金1億円以下の中小法人は次のいずれかを選択できます(令和9年3月31日までに開始する事業年度)。

  • 年800万円まで全額損金(定額控除限度額)
  • 接待飲食費の50%を損金

ほとんどの中小企業では交際費が年800万円に届くことはないため、実質的には「交際費は800万円まで損金になる」と考えて差し支えありません。だからこそ実務で大事になるのは限度額よりも、①福利厚生費・広告宣伝費・会議費など本来の科目に正しく振り分けること、②1人1万円以下の飲食費の記録要件を満たすこと、③給与と判定される支出を作らないことの3点です。

夏の支出の科目 早見表

支出科目の目安ポイント
得意先へのお中元交際費送り先リストを保存
社名入りうちわ・タオルの配布広告宣伝費不特定多数向け・少額
全員参加の暑気払い福利厚生費常識的な金額・全員に参加の機会
役員・一部社員だけの飲み会交際費(給与のリスクあり)福利厚生費にはならない
取引先との会食(1人1万円以下)交際費から除外可参加者・店名等の帳簿記録が条件
取引先との会食(1人1万円超)交際費中小法人は年800万円まで損金
社員旅行(条件を満たす)福利厚生費4泊5日以内・参加50%以上・少額
旅行不参加者への現金支給給与参加者まで給与課税になるので注意

迷ったら、支出の前にご相談ください

交際費・福利厚生費の判定は、支出が終わった後では直しようがないものがほとんどです。特に社員旅行や社内行事は、企画の段階で条件を確認しておけば、安心して全額を損金にできます。当事務所(堺市北区新金岡)では、顧問契約の中で日々の科目判定から決算・税務調査対応までサポートしています。「この支出はどう処理すれば?」という段階から、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。報酬は報酬一覧をご覧ください。

※本記事は令和8年(2026年)8月時点の税制にもとづく一般的な解説です。交際費等の損金不算入制度の特例(定額控除限度額800万円・接待飲食費の50%損金算入・1人1万円以下の飲食費の除外)は、令和9年3月31日までに開始する事業年度について適用されます。個々の支出の取扱いは状況により異なりますので、具体的な判断は当事務所までご相談ください。

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